ランニングで得られる効果は、走る時の心拍数によって大きく変わってきます。心拍数が高く運動強度が高いペースほど、スピードやスピード持久力、心肺機能、最大酸素摂取量といったレベルの高いランナーに求められる専門的な能力を鍛えることが出来ます。一方、心拍数が低く運動強度が低いペースほど、基礎的な体力や持久力、有酸素能力を鍛えることが出来ます。また、効率よく脂肪を燃焼出来るのも、心拍数がやや低めのペース。
こういったように、ランニングで得られる効果をより最大化するためには、正しい心拍数で走ることが大切。それを実践するトレーニングが、まさに心拍トレーニング。心拍トレーニングはフルマラソンやハーフマラソンを走る本格的なランナーをはじめ、ダイエットのために走るランニング初心者にも最適。この記事では、心拍トレーニングとは何か、その効果や正しい心拍トレーニングの方法について紹介しています。
目次
心拍トレーニングとは
心拍トレーニングとは、心拍数を計測・管理しながらトレーニングを行うことです。心拍数は、1分間に心臓が収縮する回数のことで、この回数を指標にしてトレーニングを行うのです。
心拍数は、運動強度が高ければ高いほど上がっていきます。例えば、階段を上がったり、坂道を上ったりすれば、心拍数は上がります。さらに階段を駆け上がったり、急な坂道を走ることで心拍数は上がります。
運動の強度が高くなれば、それだけ体は多くの酸素を必要とします。心臓は心拍数を上げることで、体により多くの酸素を送り出しています。そのため、運動強度が上がり、酸素の必要量が増えれば増えるほど心拍数が上がっていくのです。
心拍トレーニングは、心拍数を把握することで、運動強度を把握できます。運動強度を把握しながらトレーニングすることによって、目的にあったトレーニングを効果的に実践できるようになるのです。
心拍トレーニングの効果
効果的に持久力をアップさせることが出来る
心拍数を管理しながらトレーンングを行うことで、効果的に持久力をアップさせることが出来ます。持久力をアップさせるためには、有酸素運動が効果的です。有酸素運動に適した心拍数の範囲内で走ることによって、効果的な有酸素トレーニングを実践できます。
また、有酸素運動より一段階上の運動強度で走ることによってマラソンの効果的なトレーニングが出来ます。
効果的に脂肪燃焼・ダイエットが出来る
心拍トレーニングの効果が得られるのは、競技目的に走る人だけではありません。脂肪燃焼・ダイエットのために走っている人も、心拍数を意識しながら走ることで、効果的に痩せることが出来ます。
脂肪燃焼のためには、運動強度が軽すぎても駄目で、運動強度が強すぎても駄目です。脂肪燃焼のためには有酸素運動の中の軽めの運動強度で走る必要があります。その運動強度の中で走ることで効果的に脂肪を燃焼させることが出来ます。
ただ、やみくもに走っているだけでは、なかなか脂肪燃焼に効果的なランニングは出来ません。しかし、心拍数を意識しながら適した心拍数で走ることで効果的に脂肪燃焼・ダイエットが出来るようになります。
ランニング中の心拍数別の効果!目的別の心拍数の目安はコレ!
走る時の心拍数によってランニングで得られる効果は大きく変わってきます。一般的に心拍数のゾーンは、最大心拍数に対して50~60%、60-70%、70-80%、80-90%、90-100%の5つのゾーンに分けられます。最大心拍数は「220-年齢」という簡易的な計算で導き出すことが出来ます。30歳の人の場合、最大心拍数は190bpm。30歳の人の50~60%のゾーンは、心拍数が95~114bpmの時、80~90%のゾーンは、152~171bpmの時。
心拍数90-110bpm(50-60%)
- 体力回復
- ウォーミングアップ・クールダウン
- 初心者の基礎体力作り
最大心拍数の50~60%に当たる、心拍数90~110bpmはレース本番前やレース前のウォーミングアップ、そして本番後・練習後のクールダウンに最適。この心拍数で走ることで効果的に体力を回復させることが出来るので、日々のウォーミングアップやクールダウンで意識しておきたい数値です。
また、運動経験未経験者やランニング初心者の最初の基礎体力作りにもおすすめ。この心拍数のゾーンは運動強度が低いので、運動初心者やランニング初心者でも取り組みやすい。初心者はこの心拍数を意識して取り組むと良いでしょう。
心拍数110-130bpm(60-70%)
- ダイエット・脂肪燃焼
- 基礎的な持久力づくり
脂肪燃焼・ダイエットを目的にジョギングやランニングをしている人は最大心拍数の60~70%の範囲で走ることで効果的に痩せることが出来ます。
例として、40歳の場合、最大心拍数は180。目標となる心拍数は108~126。40歳の人は、目安として108~126の範囲内で走ることで効果的に脂肪燃焼やダイエットが期待出来ます。
また、ハーフマラソンやフルマラソンといった長距離走に取り組むマラソン初心者の人の基礎的な持久力向上にも、この心拍数のゾーンがおすすめ。このゾーンで長く走るLSDに取り組むことで、長時間走り続ける脚力とともに持久力を鍛えることが出来ます。
心拍数130-150bpm(70-80%)
- 持久力向上
- LT値向上
持久力の向上を狙ってランニングするなら最大心拍数の70~80%で走ることが大切です。70~80%で走ることで、有酸素運動によって持久力のアップが期待出来ます。また、マラソンを走るための土台となる持久力もこのレベルで走ることが大切です。
さらにランナーの重要な能力の一つ、LT値を向上させるためにも、この心拍数ゾーンを意識して走るのがおすすめ。目安として、この心拍数ゾーンの上限付近で走ることで、LT値の向上が期待出来ます。
心拍数150~170bpm(最大心拍数の80-90%)
- フルマラソンを走る時の目安
- レースを走る走力の向上
- スピード持久力の向上
この心拍数のゾーンは、フルマラソンを走る時の目安となるもの。30歳の場合は、152~171bpm、40歳の人は、144~162bpmが理想的な心拍数。このゾーンを平均に走り切れば自然と良いタイムで走ることが出来る。そのため、普段のフルマラソンの練習から、このゾーンを体感的に知っておくと良いでしょう。
また、普段の練習でこのペースで走ることで、より実践的なレベルの高い走力を磨くことが出来ます。レース本番に近い心拍数で走るため、中級者以上の実践的なトレーニングにおすすめ。
心拍数170~190bpm(最大心拍数の90-100%)
- 最大酸素摂取量の向上
- スピード向上
- 脚力の向上
最大心拍数の90~100%に当たる、心拍数170~190bpmは、運動強度の中でも一番強度が高いゾーン。陸上長距離やマラソンの練習で言えば、インターバル走やレペティショントレーニングを実践している時や、レース本番の苦しい時に到達するゾーンです。このゾーンは、文字通り最大心拍数に限りなく近い数値で、心肺への負担が大きいゾーン。
そのため、このゾーンでのランニングは身体への負担が大きい。疲労を回復させるのにも時間がかかる。その代わり、最大酸素摂取量(VO2MAX)の向上に効果的です。体内に取り込める酸素量が多くなれば、それだけたくさんの酸素を元にエネルギーを捻出できるということ。VO2MAXを向上させたい場合は、インターバル走やレペティショントレーニングで、疾走時の心拍数が170-190に近づくように走ると良いです。
心拍トレーニングの実践方法
その1.心拍計を用意する
心拍トレーニングを始めるには、まず心拍計を用意する必要があります。おすすめは心拍計付きランニングウォッチです。ランニングウォッチであれば、走りながら今現在の心拍数を確認することが出来ます。
もし、目標とする心拍数よりも心拍数が上がってしまっていたら、心拍数を下げるようにペースを落とすなど簡単に調整が出来ます。
その2.目標とする心拍数を設定する
心拍計を用意したら、目標とする心拍数を設定しましょう。脂肪燃焼・ダイエット、生活習慣病の改善、運動不足解消といった場合は最大心拍数の60~70%の心拍数を目標にしましょう。40歳の場合は108~126が目標心拍数になります。
一方、マラソン大会のために持久力を付ける場合は最大心拍数の70~80%の126~144が目標心拍数になります。
その3.目標心拍数で走る
目標心拍数が決まったら、あとは走るだけです。目標とする心拍数の範囲内に収まるように走りましょう。もし、心拍数が高かったらペースを落としましょう。心拍数が低かったらペースを上げましょう。
ランニング初心者の場合は、周りの人よりも遅いペースで走ってもすぐに心拍数が上がってしまうことも多いと思います。目標心拍数に合わせるとなると、かなり遅いペースになってしまうこともありますが、それでもしっかり目標心拍数に合わせて走ることが大切です。
走っていくうちに次第に、同じ心拍数でももっと早いペースで走れるようになります。最初はかなり遅いペースになってしまいますが、周りは気にせず自分のペースで走るようにしましょう。